ここでは、すでにe-onkyo musicで販売されている、様々なジャンルのMQA作品や各社から発表されているMQA-CDタイトルから、選りすぐったクラシック音楽をピックアップ。これぞ名盤と言われる作品に厳選してMQAで楽しむクラシックの深い味わいを、作品の生まれた背景や録音のエピソードなどを交えながらお伝えしてまいります。ぜひご一読ください。
執筆者紹介
雑誌編集者を長くつとめ、1975年にカール・ベーム指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団日本公演のブラームス交響曲第1番の最終楽章で、鳥肌が立ち、帰り道をさまよった経験を持つ。爾来、クラシックを生涯の友として過ごしてきた。編集者時代、クラシック以外のロックやジャズといったジャンルのアーティストと交流を深めるうちに、クラシックと、楽しさにおいて何も変わらないことに確信を持つ。以来、ジャンルを取り払ってハイレゾまで、未知なる音の発見の喜びを日々捜している。MQAを提唱しているイギリス・メリディアンには1991年以来2回オーディオ雑誌の取材で訪れ、基本コンセプトに魅せられた。またカメラ好きでもあり、特にドイツの光学製品に魅せられ、ライカのカメラ群とそのレンズの蒐集に執念を燃やしている。
「ラ・ドンナ・エ・モビレー 女は気まぐれまるで羽根・・・」
この「女心の歌」は、ジュゼッペ・ヴェルディ(1803-1901)のオペラ『リゴレット』の第3幕で、主要登場人物の一人である、マントヴァ公爵によって歌われます。みなさんも一度はどこかでお聴きになったことのある口ずさみやすい歌です。私もいつの日か、ちょっとイタリア風にスーツを着こなして、北イタリア・マントヴァの街を闊歩したいと常々考えていました。その思いは今でもあきらめた訳ではないのですが・・・。
マントヴァを舞台にしたオペラ『リゴレット』(1851年ヴェネチア(続きを読む)
ヴェルディ:歌劇『リゴレット』全曲
マリア・カラス(ソプラノ)他
ミラノ・スカラ座管弦楽団及び合唱団
指揮:トゥリオ・セラフィン
遠い昔中学生の頃、音楽の授業でオペラのレコードをひたすら聴いて、ストーリーを夢想し、心震えた体験をした。オペラの世界は大海原のごとくあまりに大きく、いったい何処から手をつけてよいやら、はたと困ってしまうことはありはしなだろうか? ストーリーを読んで音楽を聴いて、心にオペラを紡ぎ出す。歌姫トスカを演じるのはディーヴァ(歌姫)、マリア・カラスその人である。
今から半世紀以上も前、中学2年生だった私は、音楽の時間に3ヶ月をかけて、ビゼーのオペラ『カルメン』のレコードを聴いたことがあります。音(続きを読む)
プッチーニ 歌劇『トスカ』全3幕
マリア・カラス他
ミラノ・スカラ座管弦楽団及び合唱団
指揮:ヴィクトール・デ・サバータ
シュヴァルツコップのソプラノの声に、かの指揮者フルトヴェングラーがぞっこん参って伴奏ピアノを引き受けたように、私もシュヴァルツコップの歌に参ってしまい、ヴォルフという未知の音楽家の歌曲集に耳を傾けることにした。それから何度も本歌曲集を聴いている。その素晴らしさを綴ってみたいと思います。
フーゴ・ヴォルフ(1860-1903年)の『歌曲集』のことをご紹介します。歌っているのはエリーザベト・シュヴァルツコップ(1915-2006年)ピアノ伴奏は、ウィルヘルム・フルトヴェングラー(1886-1954年)です。オリジナル録音は、1953年ですが、MQAハイレゾとなってこのほどリリース(続きを読む)
ヴォルフ 歌曲集
(1953年ザルツブルク・ライブ)
エリーザベト・シュヴァルツコップ(ソプラノ)
ウィルヘルム・フルトヴェングラー(ピアノ)
東欧ハンガリーに生まれ、終戦直後からドイツ、イギリス、アメリカと指揮棒1本をもって渡り歩いた指揮者ゲオルグ・ショルティは常にエネルギッシュな指揮ぶりで、聴衆を圧倒し続けた。記念碑的なシカゴ交響楽団のマーラーの交響曲第5番は、MQA-CDで登場した。とびきりの小気味よさを味わいたい。
指揮者の目力を直接体験したことがある。1990年指揮者小澤征爾の記者会見に出席し、私が小澤に質問を投げかけたときのことである。小澤は、記者席の私を見据えるように、私の質問にきっちりと答えてくれた。質問者の方を向き、相手をみつめて話す小澤の目力の強さに、私は圧倒されたものだ。指揮者小澤征爾の目力でオーケストラのメンバーはみつめられているんだなと、そのとき、痛切に感じられた。(続きを読む)
マーラー:交響曲第5番 嬰ハ短調
ショルティ指揮 シカゴ交響楽団
12月の声を聞くと、クラシック・ファンならずとも「第九」を聴きたくなる。2018年12月だけで、日本中でどのくらい「第九」の演奏会が催されているかをちょっと調べてみたところ、アマチュア、プロの楽団を合わせて155回も催されていることがわかった。もちろん生のソリスト、合唱団、オーケストラで「第九「を聴く醍醐味は、一入(ひとしお)であり、まさに、1年を締めくくるコンサートにふさわしい。特に日本では、1年の総決算として、1年を振り返りつつ、静かに年を越し、「また新しい年を迎えようという日本古来の習慣と合致したからなのだろう。(続きを読む)
フルトヴェングラーの「第九」
ベートーヴェン:交響曲第九番 作品125「合唱」
ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭管弦楽団
シュトラウスというと、優雅なウインナ・ワルツを思いだすかもしれません。そちらはヨハン・シュトラウス。しかしです。もうひとりリヒャルト・シュトラウス(以下R.シュトラウスと略)を忘れてはいませんか?そうです、あの映画『2001年宇宙の旅』で有名な音楽。音の広がりの中に身をまかせるとき、きっと、至福のときが始まるはずです。(続きを読む)
『R.シュトラウス 交響詩《ツァラトゥストラはかく語りき》他』
カラヤン指揮 ウィーンフィルハーモニー交響楽団
現在市販されているMQAソフトの中でクラシックの名盤をレビューしていきます。第1回はチャイコフスキーの弦楽セレナード トロンハイム・ソロイスツを取り上げます。
ノルウェーというと何を連想するだろうか。北欧の国、北極に近くて、ノーベル平和賞の授賞式が行われる国。その昔はバイキングが大海原を闊歩した国、画家ムンク(1863-1944年)の絵画「叫び」、大気の発光現象オーロラが見られる国、北欧の冷涼な空気の中で、住み心地のよさそうな、社会保障の充実した国。音楽好きにもうひとつ、ビートルズの曲「ノルウェーの森」そして村上春樹の小説『ノルウェイの森』・・・。(続きを読む)
弦楽セレナーデ/ニールセン 弦楽のための小組曲
トロンハイム・ソロイスツ
クラシック音楽がなんだか最近、急に自分に合っている音楽だと思えてきた。たくさんあるクラシック音楽、いったいどこから攻め落としていけばよいのだろう?そんな方のためにとっておきのMQAアルバムをご紹介する。
「クラシック音楽作品名辞典」改訂版によると、クラシック音楽の作曲家はおおよそ1,240人、作品名は約43,900もあるという。(『クラシック音楽作品名辞典改訂版』・三省堂より)実際にクラシック音楽作品は、もっとあるかもしれない。残りの人生すべてをかけてさえも、そうそう網羅して聴くことは難しいほどの正に膨大な数である。
この膨大な数のクラシック音楽を録音してしまうという偉業に、たったひとりで、挑戦した20世紀を代表する大指揮者がいた。ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908〜1989年)である。(続きを読む)
フィルハーモニア管弦楽団、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
みなさんは、マリア・カラスというソプラノ歌手をご存じだろうか? もちろん知っている。という方は、以前からの相当なクラシック通でいらっしゃると思う。また名前は知っているけれど・・・という方、この際、一度聴いてみたいと思う方に向けて少々マリア・カラスについて、語っていくことにする。
2017年がマリア・カラス没後40年ということで、MQAのハイレゾで、ワーナー・クラシックスから42タイトルものアルバムがリリースされた。本アルバム『ザ・ニュー・サウンド・オブ・マリア・カラス』(旧EMI音源 現ワーナー・クラシックスのリリース)には、この中から、マリア・カラスのいろいろな側面をうかがい知ることができる46曲もの歌唱が収録されている。アナログのヴィンデージ盤であれば、1枚が数万円という価格で取引されていると聞くというのに、なんと大盤振る舞いなことだろうか!(続きを読む)
『ザ・ニュー・サウンド・オブ・マリア・カラス』
マリア・カラス(ソプラノ)
地球と同じく太陽の周りを回っている惑星。西洋占星術をヒントにイギリスの作曲家ホルストは壮大なオーケストラ組曲を完成させた。組曲『惑星』のパースペクティブな音楽にひたりたい。
ホルストの『惑星』といえば、ほぼ1970-80年代に青春時代を過ごした私のような音楽好きにとっては、驚きをもって迎えられる曲だった。実はその少し前、1969年にアポロ宇宙船の月面着陸を生中継でかたずをのんでテレビの放送にかじりついた世代である。NHKの科学分野の解説者 村野賢哉氏と、通訳であった西山千氏による月からの生放送だった。少年のうちでちょっと理科のできる者は科学系のロケット開発者を目指していた。少年たちがプロ野球選手を夢見るように。(続きを読む)
ホルスト 組曲『惑星』作品32
サー・サイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ベートーヴェンの交響曲全9曲を、好きなときに取り出してMQAのハイレゾで聴く。こんな贅沢なことができるようになった。それもバレンボイム指揮のベルリン・シュターツカペレによる本家本元とびきりの名演奏である。
ベートーヴェンの第1番から第9番までの交響曲全集を所有するということは、レコード音楽愛好家にとっては、まさに夢の夢であった。ちなみに78回転のアナログSP盤の全集のときは、フェリックス・ワインガルトナー(1863-1942年)指揮ウィーン・フィルほかの全集が、42枚組。これがアナログLP盤になると、ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908-1989年)指揮ベルリン・フィルの全集が、8枚組、CDの全集では、同じくカラヤン指揮ベルリン・フィルの全集が6枚組。ところが、MQAのハイレゾ・ヴァージョンのバレンボイム指揮ベルリン・シュターツカペレのベートーヴェンの交響曲の全曲演奏が、アルバム1回のダウンロードで、全部で37トラック,総演奏時間379分。(続きを読む)
Beethoven : The Symphonies ベートーヴェン 交響曲全集
ダニエル・バレンボイム指揮 ベルリン・シュターツカペレ
だんだんとクラシック音楽にひたってくると、今度は、同じ曲でも誰が指揮したとか、どこのオーケストラが演奏したか、スタジオ録音かライブ収録かなどと、より深いところへと興味が行くようになってくるものである。えてして趣味とはそうした自分で自分の深みにはまっていくことかもしれない。
今回取りあげるシューベルトの交響曲第8番『未完成』とドヴォルザーク交響曲第9番『新世界より』も、クラシック音楽に少し触れた方ならば、きっと何度かは耳にしたことがあるいわゆる有名曲であり、おそらくはCDなどの音源もお持ちのことと思う曲だ。しかし、今日ばかりは、同じ有名曲であっても、指揮者とオーケストラが違うとここまで、凄い曲になってしまうのかという例であり、それがMQAのハイレゾであれば、いや、ハイレゾであるからこそその凄みを初めて体験できるようになったのである。(続きを読む)
シューベルト『未完成』ドヴォルザーク『新世界』より
セルジュ・チェリビダッケ指揮 ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
夏に通常、避暑地で開かれる音楽祭(フェスティバル)は、普通のコンサートとはまたひと味違って、ゆったりとした雰囲気でアーチストも観客も、音楽を本当に体いっぱいで味わうことができる。今回MQAでリリースされたのは、名ピアニスト マルタ・アルゲリッチと彼女の若き仲間たちによる肩の凝らない作品ばかりである。
スイス南部といってもイタリア・ミラノまで直線距離で60キロメートルの風光明媚な都市ルガーノは、昔から音楽が盛んな都市で、鬼才といわれた指揮者ヘルマン・シェルヘンがルガーノ放送交響楽団(現スイス・イタリア管弦楽団)を指揮した極めて個性的な演奏のベートーヴェン交響曲全集は、今でも語り草になっている。
2002年からこのルガーノで、アルゼンチン出身の女流ピアニスト、マルタ・アルゲリッチの主催するルガーノ・フェスティバルが2016年まで開催されていた。アルゲリッチは1965年に開催された第7回ショパン国際ピアノコンクールで優勝したちまち世界的なピアニストとして知られている。(続きを読む)
マルタ・アルゲリッチ&フレンズ ライブ アット ルガーノ・フェスティバル2013
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)他
仕事が忙しく身も心も疲れ切ったときなどに、ハイドンの交響曲を聴く余裕感があるといいと思う。フルーティーな日本酒のようにさらっとスッキリしていて、それでいて切れのいい喉越しの音楽を味わってみませんか。この1ヶ月というもの、ハイドンを集中して聴いてきた。結論ハイドンは、やっぱりいい。中庸の美! どこかが過度に突出するわけでもなく、ひたすら、さらさらと流れる音楽。それがハイドンだと思う。
ハイドンはごく一部の曲を除き、ほとんど、そのメロディーを咄嗟に口ずさんだり思い浮かべたりできる曲が少ない。少しクラシック音楽を熱心に聴いたことがある方であれば、ベートーヴェン(1770−1827年)の交響曲第5番「運命」や第6番『田園』、シューベルト(1797−1828年)の交響曲第8番『未完成』は、咄嗟にその曲の「サビ」のところのメロディーが浮かんでくる。また、ハイドンと同時代のモーツァルト(1756−1791年)になればメロディーのまさに宝庫であり、枚挙に暇がない数々の音楽のように、メロディーが耳に残りすぐ浮かび口ずさむことができる。すぐに口ずさむことが難しいのであれば、ハイドンはいったいどこがそんなに面白いのだろうか?(続きを読む)
ハイドン 交響曲第88番『V字』から第92番『オックスフォード』、
協奏交響曲(バイオリン、チェロ、オーボエ、ファゴット、管弦楽のための)を含む
サー・サイモン・ラトル指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ブラームスは、ベートーヴェン、バッハと並んで3大Bの一人といわれ、演奏会ではこぞって演奏されることが多い交響曲を生み出した。メロディーの美しさは群を抜いている。なぜ、ブラームスは第1番を作曲するのに21年もかかったのか?そこには知られざる秘話が隠されていた。
だんだんとクラシック音楽を聴き続けてくると、もしかするとブラームスの交響曲ほど口ずさむことのできるメロディーが出てくる交響曲は、ほかにはなかなかないのではないかと思うようになった。若い頃は、チャイコフスキーやベートーヴェンのメロディーを口ずさんだが、ある年齢を境に断然、ブラームスが耳の中で鳴ってきて口ずさめるようになった。ベートーヴェンの交響曲では、メロディーが次から次へと変貌を遂げていくのが常であるし、モーツァルトの交響曲では、あふれんばかりのメロディーの宝庫だが、印象的なメロディーがシャンパンの泡のように次々と出ては消えていくという運命にある。(続きを読む)
ブラームス 交響曲全集(第1番から第4番)
サー・サイモン・ラトル指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
MQAハイレゾはずっと前に録音された音楽さえも今に生き生きとした表情で浮かび上がらせる。レコード音楽という新たなジャンルを切り開いた帝王と呼ばれた男、カラヤンの壮年期の10曲を聴いてみたい。
ベルリン郊外、緑豊かな公園の森に囲まれた中に、プロテスタントの教会グリューネヴァルト教会は聳えるように建っている。1902年の創建、第2次世界大戦時連合軍の爆撃に遭うも、1956−59年に修復、遠くからも見えてくる塔の高さは50メートル、間口25メートル、奥行き40メートルの750名の礼拝ができるという大きな教会である。祭壇のところに、お決まりのグレーのタートルネック姿の指揮者ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908−1989年)が立ち、いつもは参列者の座る所にオーケストラのメンバーが居並んで、イギリスのレコード会社EMIがベルリン・フィルを擁して録音した時期があった。(続きを読む)
カラヤン!カラヤン!カラヤン!~ハイレゾ・ベスト Selected by 名曲喫茶 月草~
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
フィルハーモニア管弦楽団
《第11回》
海に面して陽光降り注ぐイタリアを音楽にしたらどうなるだろうか?イタリア人よりも、その喜びはむしろ、異邦人のほうが強く感じられるのではないだろうか?古今東西の作曲家ロシアのチャイコフスキーも、オーストリアのモーツァルトも、そしてドイツのメンデルスゾーンも。
朝の陽光降り注ぐ、イタリア・ナポリ、ホテルのテラスで、イタリアのコーヒー・エスプレッソとともに美味しい朝食をいただくことをちょっと想像してみてほしい。もちろん、イタリアのナポリっ子はもちろんのこと、それも日頃はなかなか陽光に恵まれることの少ないドイツからの旅人だったら、その目の覚めるような明るい光への喜びはいかばかりであろうか? (続きを読む)
メンデルスゾーン 交響曲第4番イ長調作品90 「イタリア」
クリスティアン・ティーレマン指揮
ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団