マルタ・アルゲリッチ&フレンズ
ライブ アット ルガーノ・フェスティバル2013
曲目解説 Part1. ①~⑲
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)
ピアノ協奏曲 第1番 ハ長調 作品15
①第1楽章:アレグロ・コン・ブリオ(快速に生き生きと)0:14:35
*冒頭の番号はトラック番号を示す。以下同じ。
②第2楽章:ラルゴ(幅広くゆるやかに)0:11:04
③第3楽章:ロンド:アレグロ・スケルツァンド(おどけて速く)0:09:12
演奏:マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)、ユベール・スダーン(指揮)、スイス・イタリア管弦楽団
オーケストラの序奏が終わると意外にも驚くほどに優しい独奏ピアノが登場する。やがてピアノは、はきはきとした語り口でときに決然とした一面も覗かせてくれる。ゆっくりとした第2楽章も停滞することがなく、緩んだところがない。オーケストラと共に着実な歩を進める。冒頭からリズムの変化が楽しい第3楽章の小気味よさもいい。ピアノはかわいらしくオーケストラと一緒になって走って行く。なお、バックをサポートするオーケストラの指揮は、日本の東京交響楽団で長らく音楽監督を務め今は桂冠指揮者のユベール・スダーンが、丁々発止の素晴らしい指揮ぶりで、協奏曲を盛り上げている。
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)
チェロ・ソナタ 第2番 ト短調 作品5-2
④ 第1楽章(前半):アダージョ・ソステヌート・エド・エスプレッシーヴォ(落ち着いてゆっくり・音の長さを十分保って・表現豊かに)0:05:18
⑤ 第1楽章(後半):アレグロ・モルト・ピウ・トスト・プレスト(きわめて快速に どちらかというと急速なテンポで)0:09:58
⑥ 第2楽章:ロンド:アレグロ(快速に)0:08:10
演奏:ミッシャ・マイスキー(チェロ)、マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)
このチェロ・ソナタは、2楽章形式となっているため、④第1楽章(前半)⑤第1楽章(後半)⑥第2楽章と表記しました。
チェロ・ソナタ第2番は正式には、「チェロとピアノのためのソナタ」といい、チェロとピアノとが対等に扱われている。このコンビはすでに、1990年に本曲を録音もしていて、今回もぴたりと息のあったところをみせている。色つやのある伸びやかなチェロの音色と、華やかなピアノが醸し出す、ドラマチックで変化に富んだ第2楽章が聴きもの。
オットリーノ・レスピーギ(1879-1936)
ヴァイオリン・ソナタ ロ短調 P.110
⑦ 第1楽章:モデラート(中くらいの速さで)0:08:37
⑧ 第2楽章:アンダンテ・エスプレッシーヴォ(歩く速さで 表現豊かに)0:09:15
⑨ 第3楽章:パッサカリア - アレグロ・モデラート・マ・エネルジコ(中くらいの速さで しかし力強く)0:07:34
演奏:ルノー・カピュソン(バイオリン)、フランチェスコ・ピエモンテージ(ピアノ)
交響詩『ローマの松』で有名なイタリアの作曲家レスピーギ(1879-1936年)がバイオリン・ソナタを作曲していた。いかにもイタリア人作曲家だということを思わせる情熱的かつ哀しいメランコリック(憂鬱なるさま)な旋律に、自分の人生まで考えてしまうくらい、一度聴いて参ってしまった。
よく聴いていくと第3楽章などブラームスの得意とする「情熱」へのアプローチにも通じているかも知れない。しかも高音を彷徨するバイオリンの音色と共に、ピアノは飛翔するようにあちこち動き回り、とても伴奏の域ではない華麗そのものの旋律である。
フランツ・リスト(1811-1886)
⑩ 悲しみのゴンドラ S.200 -バイオリンとピアノのための
アンダンテ・ノン・トロッポ・レント (歩く速さで おそすぎないように 緩やかに)0:07:52
演奏:アリッサ・マルグリス(バイオリン)、ユーラ・マルグリス(ピアノ)
マルグリス兄妹によるわずか8分弱の小曲だが情熱的な調べがたっぷりと入っている佳曲。友人であり好敵手でもあった作曲家ワーグナーのために作曲したとリストは書いている。鐘を鳴らすようなピアノに対して、バイオリンは低い音域を静かに動き回るように哀しい旋律を奏でる。
ドミートリイ・ショスタコーヴィチ(1906-1975)
チェロ・ソナタ ニ短調 作品40
⑪ 第1楽章:アレグロ・ノン・トロッポ(快速に あまりはなはだしくなく)0:12:00
⑫ 第2楽章:アレグロ(快速に)0:03:18
⑬ 第3楽章:ラルゴ(幅広く ゆるやかに)0:09:16
⑭ 第4楽章:アレグロ(快速に)0:04:38
演奏:ゴーティエ・カピュソン(チェロ)、ガブリエラ・モンテーロ(ピアノ)
ショスタコーヴィチ(1906-1975年)はソ連時代のロシアの作曲家だが、実はロシアの土に根付いたようなロシア民謡を取り入れた作品を多く作曲している。現代の作曲家の部類だからだと聴かずぎらいの方もぜひ、本曲は一度聴いてみて欲しい。驚くほど、古くからある曲のように聴こえてくる。特に第1楽章には、パッションのような深い旋律が流れていて、なかなか心地良いのである。チェロのカピュソンは、今若手の中でピカ一の名手の一人だが、その抒情的なところを遺憾なく表現してくれる。
モーリス・ラヴェル(1875-1937)
⑮ バイオリン・ソナタ(遺作)
レント・マ・ノン・トロッポ(ゆるやかに あまりはなはだしくなく)0:16:23
演奏:アンドレイ・バラノフ(バイオリン)、ユーラ・マルグリス(ピアノ)
本曲は遺作のバイオリン・ソナタ(1897年)とわざわざ呼ばれている。なぜならばラヴェル(1875-1937年)が、生誕100年だった1975年になって発見された曲だからである。一聴してわかる通り、フランクのソナタにも通じる美しい旋律だが、ラヴェルのもつ線の細いデリケートな旋律が全編に流れている。華麗なピアノといい、バイオリンの美しい旋律といい珠玉の名品である。単一の楽章となっている。演奏はロシア期待の俊英アンドレイ・バラノフ(1986年~)のバイオリン、ユーラ・マルグリスのピアノ。とにかく聴いてほしい。本当にいい曲だから。
クロード・ドビュッシー(1862-1918)小組曲(ピアノ四手版)
⑯ 第1楽章:小舟にて
アンダンティーノ(アンダンテ=歩くような速さで よりやや速く)0:03:32
⑰ 第2楽章:行列
モデラート(中ぐらいの速さで)0:03:04
⑱ 第3楽章:メヌエット
モデラート(中ぐらいの速さで)0:03:01
⑲ 第4楽章:バレエ
アレグロ・ジュスト(正確に快活に速く)0:03:41
演奏:マルタ・アルゲリッチ、クリスティーナ・マルトン(ピアノ)
ここからは、ピアノの連弾が続く。まず1台のピアノを二人の奏者が並んで弾くという4手の連弾である。本曲は後にオーケストラ用に編曲されているのでご存じの方も多いだろう。ドビュッシーの魅力はなんといっても仏音楽の真骨頂である素晴らしい雰囲気のよさである。
しかも本曲はわかりやすいメロディーで聴く者を魅了する。アルゲリッチとともに連弾を弾くのは、ルーマニア出身のクリスティーナ・マルトン。彼女は1999年にブエノスアイレスで開催されたアルゲリッチ国際ピアノコンクールで優勝した俊英。お互いの弾く部分を補い合いつつ、実に息の合った所を見せてくれる。(続きを読む)
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