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 〈各交響曲の解説〉

 

交響曲第1番 ハ短調 作品68

 

第1楽章 ウン・ポコ・ソステヌート(少し音の長さを充分保って)−アレグロ(快速に) 13分59秒

第2楽章 アンダンテ・ソステヌート(歩くような速さで 音の長さを充分保って) 9分12秒

第3楽章 ウン・ポコ・エ・グラツィオーソ(少し優雅に) 4分51秒

第4楽章 アダージョ(落ち着いてゆっくり)−アレグロノントロッポコンブリオ(快速にしかしあまりはなはだしくなく  生き生きと) 16分59秒

 

聴き所

 

第1楽章冒頭の重々しさは、いかにもドイツの本格的な音楽を聴いているという気にさせてくれる。第2楽章のバイオリンのソロは本文で既述の通りだ。

 

第3楽章は木管楽器クラリネットで始まる。優しさに満ちたドイツの歌(リート)のようにどんどん歩みをみせていく。途中(3トラック3分25秒)からのメロディーは、個人的にはベートーヴェン第9交響曲第4楽章「歓喜の歌」の後半の展開によく似ていると思う。 

 

第4楽章は、全体が聴きものである。思わずわくわくさせられる打楽器ティンパニの高鳴り、力強い弦楽器群、木管・金管の咆哮。3分47秒からの本原稿に既に書いた中でもトロンボーンほかによる「アルペン・ホルンの主題」がつぎつぎと展開をみせ、本文に書いたベートーヴェン交響曲第9番「歓喜の歌」をオマージュした第4楽章のテーマ(4トラック4分43秒から)が何度も流れるので、聴いているうちに耳にも充分なじんでくるはずだ。高らかに鳴り渡ることで、第1楽章冒頭の重々しさはふっきれて、気持ちが晴れなにか誇らしい気持ちにもなってきて。まさにクラシックの醍醐味を体現してくれる。

 

 

交響曲第3番 ヘ長調作品90

 

第1楽章 アレグロ・コン・ブリオ(快速に生き生きと)−ウン・ポコ・ソステヌート(少し音の長さを充分保って) 13分51秒

第2楽章 アンダンテ(歩く速さで) 9分17秒

第3楽章 ポコ・アレグレット(少し やや速く) 6分44秒

第4楽章 アレグロ ウン・ポコ・ソステヌート(快速に 少し音の長さを充分保って) 9分28秒

 

聴き所 

 

第1楽章は6分44秒から始まる弦楽器が揺れているような音楽の渦に入ることが出来る。4曲ある交響曲の中でも、いちばん演奏時間が短く、唯一、最後は、天に昇っていくように、各楽章とも静かに終わっていく。

 

実は第2楽章こそ、ブラームスの作品のなかでも私には最も美しいメロディーということができると思う。冒頭のクラリネットによるしみじみとしたメロディーは、だんだんと弦楽器群に受け継がれ、大切な人に思いを寄せるように静かだが優しく付きそう。

 

第3楽章の冒頭にチェロによって奏され、3分59秒からはフレンチ・ホルンや4分29秒からは、オーボエのソロによって再び奏される印象的なメロディーは、一度聴いたらきっともう忘れられないだろう。静かだが、心に染み入るメロディーである。1961年公開の映画「さよならをもう一度( 原作サガン『ブラームスはお好き』映画の原題『グッバイ・アゲイン』(1961年米・仏合作アナトール・リトバーグ監督))に印象的に登場して以来、さらによく知られることになった。少しだけもの悲しさを秘めた正に大人のメロディーである。

 

第4楽章はブラームスの激しさの真骨頂が顔をみせる。あらゆる楽器が競うように鳴り渡りリズムに変化をつけながら動き回る。そして最後は教会音楽のように静かな時を迎える。心の琴線に触れる音楽である。

 

 

交響曲第4番 ホ短調 作品98

 

第1楽章 アレグロ・ノン・トロッポ(快速にあまりはなはだしくなく) 13分20秒

第2楽章 アンダンテ・モデラート(歩くような速さで 中くらいの) 12分12秒

第3楽章 アレグロ・グラツィオーソ(快速に 優雅に) 6分24秒

第4楽章 アレグロ・エネルジーコ・エ・パッショーネ(快速に力強く情熱的に) 10分21秒

 

ブラームスが1885年52歳のとき完成させた最後の交響曲。ブラームスの頃の作曲当時でさえ、その170年も前の大先輩ヨハン・セバスチャン・バッハの頃の古い作曲の方法を、もう一度聴衆に紹介した作品ともいわれている。全編、悲しみと嘆き、不安が漲っていて、それまでの3つの交響曲とは大いに異なっている。しかしだんだん聴き進めているうちに一縷の希望がみえてくる。

 

聴き所 

 

第1楽章は壮絶な泣き節でそこには甘ったるさは皆無だ。冒頭に始まるバイオリンによるメロディーは、まさに悲しみの吐露で、一音たりとも聴き逃すまいと、聴き手を引き込んでくる。それでも哀しみは負けずに推進力が救いとなる。

 

第2楽章は静かな宗教曲のような厳格な始まり方をみせるものの、途中からやっと救いの光明が見えてくる。その優しさがまことに心地よく慈愛に満ちて聴こえてくる。最後にはクラリネットの心憎い調べが待っている。

 

第3楽章も魂を鼓舞する音楽が続いている。今度は明るめの跳ねるような元気になる音楽である。第4楽章には「シャコンヌ」と呼ばれるバッハの頃に流行した、元々はスペインやフランスの踊りから登場した流儀が使われている。

 

「シャコンヌ」というのは、テーマがあって、それを次々に模様を変えていく「変奏曲」と呼ばれる方式で、この方法でブラームスは、あるときは孤独に淋しそうに、また、だんだんと大胆に大きな展開をみせ、激情を誘うまでに発展していく様は、まさに感激的である。

文:野村和寿

 

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サー・サイモン・ラトル指揮

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

 

レーベル名 ワーナー・クラシックス

レコード会社 ワーナー・ミュージック・ジャパン

ハイレゾ提供 e-onkyo music

http://www.e-onkyo.com/music/album/wnr28789/

ファイル形式:MQA Studio 44.1kHz/24bit 

2,619 円(税込価格)

 

◎実際の販売価格は変動することがあります。価格は税込価格(消費税10%)です。

録音が行われたベルリン・フィルハーモニー
録音が行われたベルリン・フィルハーモニー

執筆者紹介

雑誌編集者を長くつとめ、1975年にカール・ベーム指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団日本公演のブラームス交響曲第1番の最終楽章で、鳥肌が立ち、帰り道をさまよった経験を持つ。爾来、クラシックを生涯の友として過ごしてきた。編集者時代、クラシック以外のロックやジャズといったジャンルのアーティストと交流を深めるうちに、クラシックと、楽しさにおいて何も変わらないことに確信を持つ。以来、ジャンルを取り払ってハイレゾまで、未知なる音の発見の喜びを日々捜している。MQAを提唱しているイギリス・メリディアンには1991年以来2回オーディオ雑誌の取材で訪れ、基本コンセプトに魅せられた。またカメラ好きでもあり、特にドイツの光学製品に魅せられ、ライカのカメラ群とそのレンズの蒐集に執念を燃やしている。

 


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