新シリーズ
文:野村和寿
音楽好き、なかでもオーディオ好きは、「どんなジャンルが好きですか?」と問われると、たいてい「女性ボーカル」が好きとお答えになります。考えてみますと、「女性ボーカル」という単一のジャンルがあるわけでもなく、「ロックのなかの女性ボーカル」とか、「ポップスのなかの女性ボーカル」、「ジャズのなかの女性ボーカル」、「クラシックのなかの女性ボーカル」などなど、あらゆるジャンルに、女性ボーカルがあり、それらを総称して「女性ボーカル」といっているのだと思います。
’70-’90年代、小学館から刊行されていたオーディオ誌FMレコパル、サウンドレコパルの編集部にいた私は、あるとき巻頭特集で、この女性ボーカルのことを特集しようと思いました。そのとき、大まかにスタッフで決めたことがありました。女性ボーカルのディスクを選ぶ際に、聴き心地のよい女性ボーカルとひと口にいっても、聴き込んで選んでいくと、いろいろな声に遭遇しました。
多少誇張気味に言ってしまうと、金切り声のようなキンキン響く声でもなく、またアフリカ系・アメリカンのソウル・ミュージック、そのなかでも、シャウトするような激しい、情熱がこもりすぎるような女性ボーカルのように、あまりドラマチックになりすぎるのでもなく、オーディオで聴いていて、「ころころ」としていたり、「そっと囁くような声」だったり、「さわやかで気持ちが良くなる声」だったり、「甘い男心をくすぐるような官能的な声」だったりと、聴き心地が安らぐような、いわば「癒やされる」気持ちになる、女性ボーカルを探していきました。おかげさまで、この女声ボーカルの特集は人気を博し、なんどもサウンドレコパルの巻頭カラーを飾ったものです。
今回、時代はずいぶんと変遷を遂げましたが、幸いにも、MQAというハイレゾの極上の音源のなかで、これはと思う女性ボーカルを探していく旅に、みなさんと共に出発していこうと思います。
好評連載中!
ご紹介するタイトルは、2020年2月現在、各社からMQA CD(ハイレゾCD)として発売されているものか、あるいはe-onkyo musicでダウンロード販売されているものです。各商品の価格その他は変動する場合があります。MQA,MQA-CDはMQA Limitedの商標です。
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第9回 サビーヌ・ドゥヴィエル
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執筆者紹介:野村和寿
’78年FMレコパル編集部に参画して以来、約20年にわたりFMレコパル、サウンドレコパルと、オーディオと音楽の雑誌編集者を長く務める。誌上では、オーディオのページを担当するかたわら、新譜ディスク紹介のページを長く担当した。海外のオーディオ・メーカーの取材の際、宿に戻り遠く離れた土地で日本のボーカルを聴いてジーンときたという体験をし、ボーカルがいかにオーディオに人の心にダイレクトに響くかに開眼した経験をもつ。
ポップスやロック、ジャズ、クラシックといった多方面のアーチストと交流を深めるうちに、音楽はジャンルではなく、その楽しさにおいては、なんら変わらないことに確信を持つ。ハイレゾの今日に至るも、ますます、お薦めボーカルをジャンルを取り払って探していきたいと思っている。好評連載中の『MQAで聴くクラシックの名盤』はすでに連載が17回を数えている。
MQAは膨大なサイズのハイレゾ音楽ファイルのサイズをCD並にコンパクトにしながら、スタジオ・クオリティの音質を再現することが可能にします。ここでは、すでにe-onkyo musicで販売されている、様々なジャンルのMQA作品や各社から発表されているMQA-CDタイトルから、選りすぐったクラシック音楽をピックアップ。
これぞ名盤と言われる作品に厳選してMQAで楽しむクラシックの深い味わいを、作品の生まれた背景や録音のエピソードなどを交えながらお伝えしてまいります。
掲載したタイトルは名盤としてコンパクトディスクやSACDとしても発売中のものが少なくありません。また映画やCMで馴染みのある曲も数多く紹介しております。ハイレゾCDとして発売されたMQA-CDのクラシック・タイトルについても取り上げていますので、是非、合わせてお立ち寄りください。