文:野村和寿
『カーペンターズ・ウィズ・ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団』
ボーカル カーペンターズ
(兄・リチャード・カーペンター、妹・カレン・カーペンター)
ジャンル:ポップ・ボーカル
バック伴奏演奏 リチャード・カーペンター指揮
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
音源提供 ユニバーサルミュージック・ジャパン
ハイレゾ音源提供 e-onkyo music
オリジナル録音 1969年から1981年
ロイヤル・フィルハーモニー・バック録音
2018年8月13日から16日
https://www.e-onkyo.com/music/album/uml00602577262036/
ファイル形式 MQA 96kHz/24bit
3,871円 (税込価格)
◎実際の販売価格は変動することがあります。
また、同タイトル(ボーナストラック付き)192kHz/24bitバージョンも配信されています。
収録曲
1, Overture (序曲) 1:28
2, Yesterday Once More (新たなる輝き)3:57
3, Hurting Each Other (ハーティング・イーチ・アザー)3:58
4, I Need To Be In Love (青春の輝き)4:30
5, For All We Know (ふたりの誓い)2:56
6, Touch Me When We’re Dancing (タッチ・ミー)3:16
7, I Believe You (アイ・ビリーヴ・ユー)3:53
8, I Just Fall In Love Again (想い出にさよなら)5:14
9, Merry Christmas, Darling(メリー・クリスマス・ダーリン) 3:02
10, Baby It's You (ベイビー・イッツ・ユー)3:12
11, (They Long To Be) Close To You (遙かなる影)3:41
12, Superstar (スーパースター)3:51
13, Rainy Days And Mondays (雨の日と月曜日は)3:37
14, This Masquerade(マスカレード) 4:51
15, Ticket To Ride (涙の乗車券)4:11
16, Goodbye To Love (愛にさよならを)3:59
17, Top Of The World (トップ・オブ・ザ・ワールド)2:59
18, We've Only Just Begun (愛のプレリュード)3:58
19, Please Mr. Postman (プリーズ・ミスター・ポストマン)2:56
1977年のGWの狭間の土曜午後、大学生だったぼくは、心の中でですが「やった!」と叫んでいました。ちょうどその日は、FM東京の『日立サウンドイン・ナウ』という番組で、ノンストップの「カーペンターズ」のGW特集があり、いつもより高級なグレードのカセットテープを買い込んで、FM誌で、曲のタイミングを入念にチェックし、ちょっと録音ミキサーにでもなったような気持ちで、放送の始まるのを今か今かと待ち続けていたのを覚えています。
用意されたオーディオ・セット、カセットデッキとFMチューナーの前にかじりついて、FM放送をエアチェックして、首尾よく自分のカセットデッキで、録音できたのを祝う「やった!」なのでした。なにか誰のものでもない自分だけのカーペンターズの音源を入手して、喜びに満ちていたのでした。
カーペンターズ(1969−1983年)は、1970年台に、青春を過ごした音楽好きにはたまらなく、ちょっと甘くて切ない思い出が甦るグループとして、思い出に残っているでしょう。その後の時代に、生まれた皆様のためにちょっと最初にカーペンターズについて説明を加えておきましょう。
いわゆる、ザ・ビートルズのような各自楽器を担当するロック・バンドではなくて、カーペンターズは、兄リチャードと、妹カレンというふたりの兄と妹によるデュオ・グループです。視覚的には、妹のカレン・カーペンターがドラムスをたたきながら、ボーカルを担当し、兄のリチャード・カーペンターがその後ろで、ピアノを弾くというきわめてシンプルなユニットなのでした。
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カレンの女声としては低い音域に属する声は、いつも、心に響くかのように、静かなフレーズとともに、やってくるのですが、それも、英語の歌詞がとても平易でした。そんなカーペンターズを初めて聴いたのはぼくが高校生の頃、1970年代初頭のころでした。
日本の高校生のレベルでさえも、その歌詞をノートに写しとって、後で、自分でうたえるようになれるという感じでした。当時は、まだカセットプレーヤー(ソニーのウォークマンのような)さえ存在しなかった時代に、学校の行き帰りに、ノートに写しとった歌詞でもって、「イエスタデイ・ワンス・モア」や、「涙の乗車券」をうたいながら、登校していました。
「(ゼイ・ロング・トゥ・ビー)クローズ トゥ ユー・邦題・遥かなる影」の”close”という単語は、「閉める」という意味の「クローズ」ではなくて、「クローズ」には形容詞で「親密な」という意味があることを初めて知ったのもこの曲からでした。
「クローズ トゥ ユー」は、直訳すれば「あなたのそばで」みたいな意味だったのです。だから、現在でもカーペンターズの曲はうたえる方は多いと思います。今、耳を傾けても、カーペンターズは平穏無事そのものです。ゆったりとしていて、穏やかで牧歌的でさえあります。歌詞の意味もわかりながら噛みしめる、まさに「青春のモニュメント」のような曲なのです。
当時、あんなにどきどきしてリズムにあわせてハミングしつつ、彼女と過ごすときの音楽だと夢想しながら、ひとり勉強部屋で踊っていた自分を思い出します。日本のいわゆる大人しめの、地味で目立たないような普通の高校生の間では、カーペンターズは、とても心地よい音楽として受け入れられていたことは間違いありません。妹のカレンは、みんなを包み込むような優しさをもった姉貴分のような存在だと思っていたに違いありません。
カーペンターズが流行った当時というのは、アメリカがベトナム戦争の泥沼にはまりこんでいた頃のことで、いわゆるプロテスト・ソングが流行していました。
プロテスト・ソングとは、「人種差別や抑圧、偏見に立ち向かう音楽」という意味で、有名なところでは、ボブ・ディランや、ニール・ヤング、そして、英国のザ・ローリングストーンズ、パンクロックのセックス・ピストルズなどが、メッセージ色の強い、政治に反抗する若者の文化、若者の武器としての音楽がありました。
英国のロック・グループ クイーンはカーペンターズを、「自分の一番嫌いなグループ」に挙げていました。つまり、「自分たちの敵は、カーペンターズだ」といっていたくらいです。「ミルクを飲んで、アップル・パイを食べてシャワーを浴びる」ような音楽、毒にも薬にもならない音楽と、カーペンターズは揶揄されていたのも本当です。
ご多分にもれず。当時の日本の音楽雑誌も、なぜか、カーペンターズはあんなに流行していたというのに、ひとつも取り上げることがなかったように思います。ロックを「過激な反抗の象徴としてとらえる」という論調が、表面的だったにせよ、日本でも音楽雑誌のページをしめていたのです。
当時カーペンターズは、兄妹の二人デュオだと書きましたが、そのほとんどの曲は、妹カレン・カーペンターがうたっていて、兄のリチャードは伴奏をしているくらいで、いったい何をやっているんだろうと、高校生ながら考えていました。
今回ご紹介するアルバム『カーペンターズ・ウィズ・ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団』をほぼ、約40−50年ぶりにカーペンターズを聴いてみて、カーペンターズの二人の役割が、初めて明確になって浮かび上がってきました。
兄のリチャードはカーペンターズのなかで、作曲するというよりも、編曲するということに役割があったようなのです。編曲、英語ではアレンジですが、曲のメロディー・ラインをシンプルに作ったものを、聴き手に効果的にアピールするために、お化粧を施すことをアレンジといいます。
それは「どんな楽器をカレンのボーカルに加えていけばいちばん、カレンのボーカルが映えるだろうか」を考えて、ギターやサックスといったポップスには欠かせない楽器に加えて、ハーモニーのきれいさでお化粧をほどこしています。なにしろ、1970年代当時は、まだシンセサイザーというものが、そんなに普及していなかったのです。そこで、生音に生の楽器を使って、アレンジしていくということをしました。
本アルバムのアレンジでは、さらに、クラシックのオーケストラで使われているバイオリン群や木管楽器のオーボエや、金管楽器のトランペットに至るまで、いろいろな楽器を使うことで、カレンのボーカルのバックに加えていくという試みをしています。
リチャードが語るカーペンターズ17年ぶりの新作 『カーペンターズ・ウィズ・ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団』リチャードが、ロイヤルフィルハーモニーとの録音セッションを指揮しているところや、カーペンターズの’70−’80年代の懐かしい映像が紹介されています。
11曲めの「(ゼイ・ロング・トゥ・ビー)クローズ トゥ ユー・邦題、遥かなる影」の終わりの「さび」の部分には、ボーカルのハーモニーを何度も重ねて録音していくというオーバー・ダビングという方法で、ひとりのカレンのボーカルを中心にして、兄リチャードのボーカルも加えて、それを何度も重ねることで、あたかも、12人の合唱団がバックに存在するかのようにアレンジを施しているのです。なにしろ、ボーカルのカレン、彼女自身を中心に歌声を重ねているために、濁りがなくて音が澄んでいるハーモニーを作ることができます。
16曲めの「グッドバイ・トゥ・ラブ(愛にさよならを)」では、カーペンターズのツアーにはよく参加していたギタリストのトニー・ペルーソが、1分25秒あたりと2分49秒あたりから、激しいソロのギターテクをみせます。それはそれは過激なまでの、いななくようなエレキギター・ソロです。これも、静かでおだやかなカーペンターズらしくない、およそ、その正反対の意表をつくかのようなギターの嘶(いなな)きに、聴く者を驚かせました。
ここでもう少し踏み込んで、11曲めの「(They Long To Be)Close To You(遙かなる影)」と16曲め「Good To Love(愛にさよならを)」について、『カーペンターズ・ウィズ・ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団』バージョン(MQA 96kHz/24bit)(ここでは新バージョンと呼ぶことにします)を旧バージョンと聴き比べてみることにしましょう。
『Singles 1969-1981』(バージョンMQA 48kHz/24bit)(ここでは旧バージョンと呼ぶことにします)カーペンターズの楽曲は何度かのリミックスを経てはいますが、1991年にリミックスされたものですが、1970年にシングルとして発売されたオリジナル・バージョンにより近いものということができます。
『Singles1969−1981』では、同じ曲を、それぞれ20曲め、15曲めとしてハイレゾ・リリースされています。(ここでは旧バージョンと呼ぶことにします。)
ひとことでいえば、今回のアルバムでは、妹カレン・カーペンターのゆったりと落ち着きのあるボーカルをいかしつつ、兄リチャード・カーペンターが、カレンのボーカルをより華やかに引き立たせようと、フル・オーケストラを起用し、華麗にゴージャズに素敵なアルバムにして、妹カレンにプレゼントしたのだと思われます。
こうしたオリジナルのアレンジでさえも、当時の日本の高校生・大学生には、このカーペンターズは、かっこうよくて、ちょうどよいくらいの刺激で、踊りだしたくなったり、恋人に、自分の録音したカセットテープをプレゼントして彼女の気を引く材料にしたりするには十分な音源でした。
今回ご紹介したアルバム『カーペンターズ・ウィズ・ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団』(2018年12月7日発売)には、妹のカレンはいません。すでに、1983年にこの世を去っているからです(享年32歳)。妹カレンの残したボーカルをいかして、兄のリチャードがアレンジをし直しています。
初録音当時は、まだ資金がなくて、ガレージに毛の生えたようなスタジオでの録音で、バックもシンプルそのものでしたが、今回のアルバムでは、英国ロンドンのロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団という女王陛下のオーケストラを、ビートルズの録音で有名なアビイ・ロードスタジオで録音が行われました。
2018年8月13−16日 ロンドン・アビイ・ロード・スタジオの2スタジオで、バック音楽が新たに録音された。指揮は、カーペンターズの兄リチャード・カーペンター自身がタクトを振り、フル編成のオーケストラ・英国の名門ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏。写真提供:ユニバーサルミュージック・ジャパン Photo by Carsten Windhorst
ぼくははじめて、今回のアルバムを聴いて兄リチャードのカーペンターズでの役割がわかったような気がします。妹カレンの低く安定した心地よいボーカルを100%生かして、100倍に素敵になるアレンジを施し、カーペンターズのサウンドを作っていたのです。こんなにソフトでメロウなポップスというのは、ついぞ出ていないと思います。心を穏やかにしてくれるカレンのボーカルは、2020年の今に至るも大変貴重な存在といえるでしょう。
文:野村和寿
執筆者紹介
’78年FMレコパル編集部に参画して以来、約20年にわたりFMレコパル、サウンドレコパルと、オーディオと音楽の雑誌編集者を長く務める。誌上では、オーディオのページを担当するかたわら、新譜ディスク紹介のページを長く担当した。海外のオーディオ・メーカーの取材の際、宿に戻り遠く離れた土地で日本のボーカルを聴いてジーンときたという体験をし、ボーカルがいかにオーディオに人の心にダイレクトに響くかに開眼した経験をもつ。
ポップスやロック、ジャズ、クラシックといった多方面のアーチストと交流を深めるうちに、音楽はジャンルではなく、その楽しさにおいては、なんら変わらないことに確信を持つ。ハイレゾの今日に至るも、ますます、お薦めボーカルをジャンルを取り払って探していきたいと思っている。
好評連載中の『MQAで聴くクラシックの名盤』はすでに連載が17回を数えている。
オリジナルのカーペンターズ『Singles 1969-1981』 MQAで配信中!
『Singles 1969-1981』
音源提供:ユニバーサルミュージック・ジャパン
ハイレゾ音源提供:e-onkyo music
ファイル形式 MQA 48kHz/24bit ¥4,481
こちらのアルバムは、1969年から1981年までリリースされたEP盤シングル全21曲を一堂に集めていて、曲によっては、1989年から2004年までにリミックスされたバージョンが含まれています。つまりは極力オリジナルに近いアレンジで、よりシンプルなアレンジのもと、カーペンターズのヒット曲を聴くことができます。
収録曲 (Singles 1969-1981)
1, Yesterday Once More[1991 Remix](イエスタデイ・ワンス・モア) 03:58
2, We've Only Just Begun
(愛のプレリュード)03:05
3, Superstar[2004 Remix]
(スーパースター)03:47
4, Rainy Days And Mondays[1991 Remix] (雨の日と月曜日は)03:35
5, Goodbye To Love[1991 Remix]
(愛にさよならを)3:56
6, I Believe You
(アイ・ビリーヴ・ユー)3:56
7, It's Going To Take Some Time[1989 Remix] (小さな愛の願い)2:58
8, This Masquerade[1990 Remix]
(マスカレード)4:53
9, Ticket To Ride
(涙の乗車券) 4:10
10, Top Of The World[2004 Remix]
(トップ・オブ・ザ・ワールド) 3:00
11, Only Yesterday
(オンリー・イエスタデイ) 3:46
12, Hurting Each Other[1991 Remix](ハーティング・イーチ・アザー) 2:48
13, Please Mr. Postman[1991 Remix](プリーズ・ミスター・ポストマン) 2:47
14, Merry Christmas Darling[Remix]
(メリー・クリスマス・ダーリン) 3:07
15, Sing[1994 Remix]
(シング) 3:17
16, Bless The Beasts And Children[1991 Remix]
(動物と子供達の詩)3:15
17, I Won't Last A Day Without You[1991 Remix]
(愛は夢の中に)3:55
18, Touch Me When We're Dancing
(タッチ・ミー)3:20
19, For All We Know[1990 Remix]
(ふたりの誓い・リプライズ)2:33
20, (They Long To Be) Close To You[1991 Remix]
(遙かなる影) 3:41
21, Calling Occupants Of Interplanetary Craft (The Recognized Anthem Of World Contact Day)[1989 Remix]
(星空に愛を)7:11
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