アーチスト:ジョニ・ミッチェル
ジャンル:ジャンル:ロック・シンガーソングライター
音源:ワーナーミュージック・ジャパン
アナログ・テープを基にした2013年192kHz/24bitマスターを176.4kHz/24bitに変換しMQA-CD化したものです。
2,800円 + 税(生産限定盤)
◎実際の販売価格は変動することがあります。
■収録曲
1,オール・アイ・ウォント
ALL I WANT 3:34
2,マイ・オールド・マン
MY OLD MAN 3:34
3,リトル・グリーン
LITTLE GREEN 3:27
4,ケアリー
CAREY 3:02
5,ブルー
BLUE 3:05
6,カリフォルニア
CALIFORNIA 3:51
7,ディス・フライト・トゥナイト
THIS FLIGHT TONIGHT 2:51
8,リヴァー
RIVER 4:04
9,ア・ケイス・オブ・ユー
A CASE OF YOU 4:22
10,リチャードに最後に会った時
THE LAST TIME I SAW RICHARD 4:15
■マスタリング:ワーナー・エレクトラ・アトランティック・スタジオ
ジャスティン・スミス カリフォルニア州バーバンク
Mastered by Justin Smith, Warner Electra Arkantic Studio,Burbank,California
■発表:’71年(リトル・グリーンは ’67年発表)
All selections copyright 1971,Joni Mitchell Music (BMI)
Except "Little Green,"copyright 1967 Siquomb Music(BMI)
ジョニ・ミッチェルは、アメリカ西海岸、ウェストコーストを代表するシンガーソングライターです。もう少しいうと、カリフォルニア州北部バーバンクを中心とするアサイラム・レコード(’71年デイヴィッド・ゲフィンとエリオット・ロバーツが設立、現在ワーナーミュージックの傘下にあります)に集う面々の音楽が、ウェストコースト・サウンドまたは、ウェストコースト・ロックと呼ばれる音楽です。
ウェストコースト・サウンドは、’80年当時の音楽ファンにとっては、カリフォルニアの青い空と同じ意味であり、このサウンドを聴くには同じウェストコーストの雄、スピーカー・メーカーJBLに、日本の音楽ファンはあこがれを持っていました。
さて、このアルバムに戻りましょう。アルバム『ブルー』が発表されたのも同じ、’71年ですが、ジョニ・ミッチェルの歌に大いに刺激を受けた人たちの中には、かのアメリカを代表するシンガーソングライター ボブ・ディランもいたくらいです。
’75年に彼が発表した『血の轍(わだち)(BLOOD ON THE TRACKS)』というアルバムの1曲め、「ブルーにこんがらがって(Tangled Up in Blue)」という曲があるのですが、これは、ジョニ・ミッチェルの本アルバム『ブルー』に大いに影響を受けて「ブルー」という名前を入れた曲を作曲したほどでした。
同じレコード会社の後輩たちには、イーグルス、リンダ・ロンシュタット、ジャクソン・ブラウン、J.D.サウザー、ジャクソン・ブラウンといったあとあとウェストコースト・サウンドを処って立つすごい面々を輩出していったのですが、彼らにとっての旗頭ともいえる存在の女性シンガーソングライターがジョニ・ミッチェルだったのです。
ジョニ・ミッチェルのそれほどのカリスマ的な魅力はなんだろう?と、アルバム『ブルー』に収録されている10曲をCDに付属している訳詞をみながら聴いていくことにしました。
1曲め「オール・アイ・ウォント」に出てくる「たった一人で旅しているの」「恋を通してあたしがしたいのは、あなたとあたしの一番いいところを引き出すことなの」
ひたすら、男の帰りを待つ女・・・。前回取り上げたテレサ・テンうたうボーカルとは真逆のような恋に対するまさに女性の強気の攻めの姿勢です。
4曲め「ケアリー」では、「あなたってホントに嫌な奴ね、でも好きよ」と突き放すようでいて、殺し文句も語ります。
7曲め「ディス・フライト・トゥナイト」の「あなたのその愛の光が好きよ」「お願い、このあたしの可哀想な心に明かりを灯して」「あなたを頭から追い出せない」と、女の強さのなかに、時折弱さの片鱗もみせるのです。この恋のギャップに揺れる女です。
8曲め「リヴァー」「愛する人にサヨナラを言わせてしまった」といい、
9曲め「ア・ケイス・オブ・ユー」では、「愛が壊れる手前・・・あなたはとても苦くて、甘い・・・愛とはふれあう魂・・・」と微妙な女心をかいまみせます。
10曲め「すべての恋愛はいつか必ず同じ運命に出会う」というフレーズで結ぶのです。
これまで歌詞をたどっていくと、ジョニ・ミッチェルの一筋なわではいかない強さと弱さを複雑にからめた歌詞からもみえてくるようです。ジョニ・ミッチェルは、ちょっとハスキーで鼻にかかったような歌声です。とくに、ハイノートと呼ばれる高い音域にかかったときの、彼女のファルセット(裏声)になった、その声の変わりめにさしかかるところが、なんともいえず、かっこういいのです。
透明感のある歌声でうたってみせる。アコースティック・ギター1本あるいはピアノ1つの弾き語りで、シンプルにうたってみせるのです。ボーカルを盛り立てるために、バックには控えめなピアノやギターが静かに刻み、小刻みにパーカッションが間の手を入れるという曲もあります。しかし、ひたすら聴き手は、彼女の歌に翻弄されっぱなしなのです。
ジョニ・ミッチェルがウェストコーストの後輩たちに憧れられる存在なのは、先ほどいいました、かっこういい強気の女性と、弱さの片鱗がちょっぴりとのぞかせる、そんなところが、彼女に込められ、歌のもつ力の広がりや、大きさに圧倒されているからかもしれません。
ジョニ・ミッチェルは、’80年代は、オーディオのアナログ試聴盤としてもよく聴かれていました。きっかけは、’80年代のウェストコースト・サウンドのインタビューをひもとくと、必ずと言ってよいほど、彼女の名前が登場するので、すでに、’71年とその約10年前にリリースされていた本アルバムを、アナログの試聴盤として使ったのです。
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’80年代当時のオーディオのキイ・ワードは、「実体感」と呼ばれるワードでした。あたかも眼前に、アーチストが存在するごとく、コンサートのかぶりつき席で、アーチストのサウンドを体中に浴びてみたいというコンセプトで、よく使われていたスピーカーが、オーディオのウェストコースト・サウンドを代表するJBLの4311Aスタジオ・モニターと呼ばれる、少しこぶりのスピーカーでした。
この4311Aの特徴は、アメリカのFM局などのモニター・スピーカーとして、ニア・フィールド・モニター(近接試聴)用として開発されていたので、低音を受け持つ白いウーハーが上側についていたことでした。少し大きめのボリュームで、よくジョニ・ミッチェルを試聴しました。それはのちのち、オーディオ界では、「実体感」VS「音場感(ステレオイメージ)」を生みます。
「音場感」とは、むしろ周囲の雰囲気のなかでぽっかりと音が浮かぶようなオーディオを目指すことにあります。しかし、こと’80年代までは、やはり「実体感」こそが主流だったように思います。まさに「かぶりつき」「ひとりじめ」のサウンドでした。
’80年代にJBLの本拠地である、アメリカ・ロサンゼルス近郊のバーバンクに取材に伺ったことが有りました。ウェストコースト・サウンド発祥の地と同じバーバンクです。
JBLのだだ広い工場の敷地は、ビールメーカー・バドワイザーの隣に位置していました。まさに、カリフォルニアの青い空、のどがすぐにからからに乾き、バドワイザーでのどを潤すのが最高の時でした。
乾燥した大地で、乾燥したウーハーから流れ出るウェストコースト・サウンドに、湿り気はみじんもありませんでした。
文:野村和寿
ブルー(Blue)
アーチスト:ジョニ・ミッチェル(Joni Mitchell)
ワーナーミュージック・ジャパン
https://www.e-onkyo.com/music/album/wnr21805/
ファイル形式
MQA Studio 192kHz/24bit
2,409円(税込価格)
※ 収録曲は、MQA-CDと同一です。実際の価格は変動することがあります。
執筆者紹介
’78年FMレコパル編集部に参画して以来、約20年にわたりFMレコパル、サウンドレコパルと、オーディオと音楽の雑誌編集者を長く務める。誌上では、オーディオのページを担当するかたわら、新譜ディスク紹介のページを長く担当した。海外のオーディオ・メーカーの取材の際、宿に戻り遠く離れた土地で日本のボーカルを聴いてジーンときたという体験をし、ボーカルがいかにオーディオに人の心にダイレクトに響くかに開眼した経験をもつ。
ポップスやロック、ジャズ、クラシックといった多方面のアーチストと交流を深めるうちに、音楽はジャンルではなく、その楽しさにおいては、なんら変わらないことに確信を持つ。ハイレゾの今日に至るも、ますます、お薦めボーカルをジャンルを取り払って探していきたいと思っている。
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