文 橋爪 徹

 

待望のハイレゾ・ストリーミング、 Qobuzを最もシンプルに楽しむ方法

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真打登場!待ちに待ったハイレゾ・ストリーミング、Qobuz

 

昨年11月、オーディオファンに待ち望まれていた高音質ストリーミングサービス「Qobuz」(コバズ)が日本に上陸した。これまでハイレゾを聴く機会がなかった方や、そもそもハイレゾに敷居の高さを感じていた方にもQobuzは抜群に相性がいい。

 

本稿では、お使いのオーディオシステム(アンプやスピーカーなど)にMeridian218とPCを加えてQobuzを最もシンプルに楽しむ方法を解説する。再生ソフトはRoonを選択した。Roonは、パソコンやネットワークの知識がなくても使える上に、Qobuzと融合して使えるように設計されている。

 

また多くのMeridian製品にはRoonの現CEOが開発に関わったネットワークシステムSLS(Sooloos)が実装されおり、実はRoonと基本的な互換性がある。こうした背景からMeridianとRoonは極めて親和性が高い関係にある。ここで紹介するMeridian218は、QobuzやTIDALなどの高音質ストリーミングサービスやRoonが最初にデビューした当時からハイレゾ・ストリーミングとRoonを強く意識して設計された製品だ。

 

筆者はこれまでストリーミングサービスを積極的に活用してきたタイプではない。仕事でAmazon、Apple、Qobuzと一通りのサービスは触ってきたが、日常で使っているかというと微妙である。さらに言えば、Roonも環境は持っていたが、動作確認や仕事上必要なケースで使うだけでほぼ初心者のようなものだ。

 

また、筆者はAIが勧めてくる「この曲が好きな人はこんな曲も聴いています」というレコメンドをあまり聴かないタイプだった。結果として、これからストリーミングをオーディオに取り込もうという読者の方に近い目線でお伝えできるかと思っている。

 

そんな偏食家の自分にも、手を替え品を替えて、色々な切り口で音楽との出会いを実現してくれるのがQobuz + Roonシステムのすごいところだ。今回、Meridian218とRoonを使ってQobuzを体験させてもらい、今まで触れてなかったストリーミングの魅力に気付くことが何度もあった。さっそくQobuzデビューにふさわしいシステムを紹介していこう。

 

 

オーディオマインドあふれるQobuzの魅力

 

まず、最初にQobuzの魅力を再確認しよう。そもそも、ハイレゾを聴けるストリーミングサービスならAppleやAmazonを選ぶという手もある。配信される最大フォーマットは、192kHz/24bitと同等だ。一見するとQobuzの優位性は判りにくい。しかし筆者はQobuzには他社サービスを上回る確かな魅力がある、と感じている。

 

では、Qobuzならではの特徴はどこにあるのか。まず、なんと言っても「音質への矜持」だ。「音質コンセプト、考え方の違い」と言っても良いだろう。本稿で解説するRoon+Qobuz利用においても素晴らしい音質が得られたが、公式のデスクトップアプリやモバイルアプリにおいても、他社のサービスより素性の良い音質を得ることができる。

 

Qobuzは、それまで圧縮音源が常識であった音楽ストリーミングにCDクオリティの16-Bit / 44.1kHzの音源を世界で初めて採用した先駆者的な存在だ。パッケージメディアが圧縮音源のストリーミングに押されて衰退する中で、まず欧米のオーディオ好きに支持され、世界に広がってきた経緯がある。現在の楽曲の大部分で24-Bitのハイレゾファイルを揃えているが、メジャーレーベルのみならず、世界のインディペンデントレーベルに働きかけて積み上げてきた成果と言える。

 

日本にはご存知の通り、Apple Music やAmazon Musicが広まり、ハイレゾの楽曲も提供するようになっている。しかし、Apple はヘッドフォンの売上No.1のオーディオブランドでもある。また、Amazonも別のアプローチで自社のAlexaデバイスやFire TVと連携させたり、Bluetoothスピーカーを強く意識した戦略を進めている。つまり、こうした大手サービスの音質は、自社のハードウェアや推進するサービス向けに最適化されていて当然だ。

 

Qobuzは2008年のスタート時点から、オーディオ愛好者に向けて世界初でCDクオリティ(44.1kHz /16-Bit )ファイルを提供し続けている。おそらくレコード会社からの抵抗もあっただろうが、今ではカタログの大半で24ビット(ハイレゾ)音源のストリーミングとダウンロードとを実現させている。いわば、ハイレゾ・ストリーミングの草分け的な存在なのだ。

 

こうしたQobuzが日本進出のパートナーに選んだのがe-onkyoだった。音質へのこだわり遺伝子が日本でもしっかり継承されたことは頼もしい。本取材にあたり、筆者はQobuzのWebサイトの案内に従って、e-onkyo musicからのアカウント引継ぎを試みたのだが、非常にスムースに行うことができた。日本での運営会社、Xandrie Japanにe-onkyo Musicのキーマンが配され、その確かな経験が生かされているのも心強い限りだ。執筆時点でQobuzはe-onkyo musicの配信楽曲、レーベルが100%引き継がれた訳ではない。今後、邦楽のカタログがより増強され、また楽曲の日本語表示が改善されていくことを期待したい。

 

邦楽をRoonで再生すると日本語で表示されるタイトルと、ローマ字、英語表記されるタイトルとが混在していた。

歌詞は日本語で表示され、検索も日本語入力でできる。



 

お得なプライスで購入可能、ダウンロードストアも併設

 

Qobuzのもう一つの強みは、ハイレゾファイルのダウンロード購入もできるところだ。ダウンロードに備えて、Qobuzのアプリもパソコンにインストールしておこう。アプリ上では、ストリーミングとダウンロードストアとの連携がとれているので、気になった楽曲はすぐにダウンロード購入することが可能だ。ストリーミングでは聴けないアルバムもあるが、ダウンロードで入手出来るなら、検索にヒットするので音楽との出会いを逃さない。

 

また、これは一般論だが、ストリーミングの常としてレーベルやアーティストとの契約上の問題で、それまでロックされていた音源が聴けるようになることもあるが、逆に聴けなくなってしまう可能性もゼロではない。Qobuzなら、気に入った愛聴盤は、ダウンロードで手元にコレクションとして置けるし、ダウンロード後は、Roonを使えば新たにダウンロードした音源もストリーミングの音源でも、全く何のストレスも無く整理されて楽しむことができる、サブスク会員にお得なセール情報が定期的に提供されているのも嬉しい。

 

また、Qobuzアプリは、充実した音楽、楽曲に対するオリジナル情報が得られる。一般的なレコード会社のリリース情報を元にしたものだけではなく、独自に専門家が書き起こしの情報が提供されている。これらを反映したオリジナルの読み物もQobuz独自の隠れた付加価値だ。マガジンという項目があって、音楽の話やオーディオの話など、読み応えのある記事が配信されている。記事で気になった音楽はすぐにリンクから聴くことが可能だ。

 

まだまだ他にも語りきれない、筆者ですら気付いていない魅力があるのがQobuzだ。ここで紹介したのはあくまで一部だということは強調しておきたい。 

  


ベーシックで音質の良いRoon + Qobuzシステム。お手持ちパソコンで始めよう

              
              

 

次に用意するアイテムや接続方法などについて説明しよう。さっそくだが、上記の「ストリーミング システム図」をご覧いただきたい。実際、Qobuzを楽しむには、色々な方法があるが、ここではハードもソフトも最低限でスタートできる方法を具体的に紹介していこう。

 

インターネット環境を見なおそう

 

まず「無線ルーター」(Wi-Fiルーター)は、モデムやONUと接続して家庭内に無線ネット環境を構築する。ISPからレンタルしているモデム/ONUにルーター機能とWi-Fiが内蔵されていれば、別途購入する必要はない。また「パソコン」は、WindowsでもMacでもいい。Roonのソフトウェアをインストールすることで「音楽サーバー」として機能することになる。

 

Roonを説明するコンテンツやメディア記事では、このRoonが入ったパソコンのことを「Roonコア」とか「Roonサーバー」とか呼んでいる。こうした用語が何だか小難しく感じるかもしれないが、パソコンがCDプレーヤーなどと同様にソース機器として機能する、と考えてもらえば良い。

 

また、再生するときには、音楽サーバー:パソコンの電源はオンにしてRoonを起動しておく必要がある。ネットワークとの接続はイーサネット接続(=LANケーブルによる有線接続)が推奨されている。お使いになるパソコンにイーサネット端子(LANケーブル用の端子)がない場合には、パソコンのUSB端子→ イーサネット変換のアダプターなどが使える。

 

また、インストール後に必要な初期設定はパソコンからも出来るが、普段の操作やちょっとした設定変更、選曲、音量調整は、使い慣れたiPhone、iPadやAndroid 端末から専用アプリRoon Control(無償)で操作することが可能だ。

 

Roonが動作するパソコンをWi-Fi接続すると、せっかくのハイレゾ音質がワンランク落ちるばかりか、音切れの原因にもなる。パソコンの性能によっては全般的な動作レスポンスもスローになりがちだ。また電波環境は時間帯などでも大きく変動することが多いので、ここはイーサネット接続(LANケーブルで接続)を励行したい。

写真:Meridian 218 リアパネル

Roon再生に特化すると、接続に必要なのはアンプに接続するアナログ・ケーブルとネットワーク接続のためのLANケーブルのみだ。中央の白いエリアに同軸デジタルと光入力、左端にアナログ入力も備えている。


 

ストリーミング音質の改善は「上流」から

 

さて、図に示した「ネットワークスイッチ」(ハブとも呼ばれる)を介さずに、無線ルーター(Wi-Fiルーター)から直接の接続でも動作は可能だが、導入した方が大きなメリットがあるので、詳しくは後述する。

 

後は218からRCAのアナログ出力から既存のアンプなどへ接続するのみ。以上、簡単明快なシステムでストリーミングがスタートできる。本取材で実際にこれら機材を置いて配線すると、だいだい15分ぐらいでセットすることができた。

 

また、既にダウンロード購入したり、リッピングした音楽ファイルを持っている方もいるかもしれない。その場合は、そのファイルを保存しているパソコンやNASを同じネットワークスイッチに接続すれば良い。筆者の場合は、Roonの設定画面から、普段使っているオーディ用のNAS、Soundgenicを「保存場所」として追加した。

 

また前述の通り、Qobuzのクオリティを十分に楽しむために、音楽サーバーとなるパソコンは、直接インターネットとダイレクトにLANケーブルで接続したいのだが、パソコンにLANケーブルを接続するポートがないことがあるかもしれない。その場合は、下の写真のようなUSB接続のイーサネット変換アダプター等を活用すると良いだろう。

 

※使える変換アダプターはパソコンのUSB端子のタイプやOSなどにより異なります。詳細は各メーカーのHPでご確認ください。

  

バッファロー 有線LANアダプター

Type-A USB3.2(Gen1) to イーサネット1000Mbps LUA5-U3-AGTE-BK

 

BELKIN 有線LANアダプター

USB-C to イーサネット 2500Mbps

 

サンワサプライ(変換器内蔵 LANケーブル)

USB Type-C LAN変換ケーブル 3m カテゴリ6 

1000Mbps


 

システム接続に適したLANケーブルは?

 

LANケーブルは様々な種類があって、迷ってしまうかもしれない。LANケーブルには大きく2種類ある。撚り線タイプと単線タイプだ。前者は柔らかくて断線に強い。単線は品質的には優位で長距離の引き回しでもロスが小さいが、固めのシース(表皮)が使われていて引き回しが難しく曲げにくいものがある。

 

PCやオーディオ機器廻りの短めの配線用にはケーブルがある程度の柔らかく引き回しができることも大切だ。抜き差しが多くなる箇所なら、撚り線一択だ。また、PCや無線ルーターがオーディオ機器から離れた場所にあるときは、単線ケーブルを使って引き回すことも有力な選択肢になり得る。

 

オーディオ信号の伝送にスポットを当てれば、ハイレゾの伝送でも最もベーシックな「CAT5」(カテゴリー5)で支障はないものの、二重のノイズシールド構造を謳った「CAT6a」以上が音質的に有利だ。また、「CAT6a」以上なら4K動画などの配信にも適しているので汎用性も高い。いずれにせよ、LANケーブルは種類が豊富でどこでも安価で買えるので、気軽に試してみて欲しい。

 

ストリーミング・デビュー戦に「ネットワークスイッチ」は必須アイテム

 

ネットワークスイッチは、Qobuz & Roon導入を機会に是非、備えて欲しいアイテムだ。購入するときは、「金属製」「外部電源(ACアダプタ)式」「必要最低限のポート数」、この3条件を参考に選んでみてほしい。予算的には1,000円代から見つかるはずだ。プラスチック筐体に比べて金属筐体は外来ノイズへの耐性だけでなく、それ自体の重さを活かした耐振性のメリットもある。また、使わない空きポートから外来ノイズが入ることがあるので最初は5つぐらい端子の製品から選択すると良いだろう。

 

ここでもう一度配線の流れを確認しよう。家庭で無線ルーターをすでに利用している場合、ネットワークスイッチを省略して直接、無線ルーターのLAN端子と各機器を接続しても動作自体は可能だ。

 

しかし、無線ルーターがリスニングエリアから遠いところにある場合も少なくないと想定される。そうなると無線ルーターから最低2本のLANケーブルを無線ルーターから、リスニングエリア周辺まで引き回さなければならない。

 

また、テレビやゲーム機器、スマホなどが無線ルーターに接続されている少なくないだろう。ノイズ対策上もストリーミング環境用に独立させた1台のネットワークスイッチをオーディオ用に増設することをオススメしたい。

 

音楽ファイル再生は、アナログのような趣味性や創造性がなくつまらないという声がある。ところがどっこい。ネットワークオーディオやPCオーディオの世界は、アナログ同様にアクセサリー追加などの「楽しい沼」がある。何しろ、民生用のパソコン廻りの機器はオーディオ向けに開発されていないため、ノイズや振動など対策できる側面が多々あるのだ。

 

この機会にハイレゾ・ストリーミング導入を機会にインターネットの「上流」からネット環境を一度、チェックしてみて欲しい。365日 フル稼働で何年間も使っている無線ルーターが老朽化して性能が落ちていたり、ネットとの接続に使われているレンタル機器についているデフォルトのLANケーブルが痛んでいたりすることもあるからだ。

 


ネットワークスイッチ & アクセサリー情報

 

ベーシックなスイッチなら、小さな予算で見つけることができる。金属筐体、ACアダプタ付、必要最小限の端子数で見つけよう。この条件で低価格のものなら、たいていは冷却ファンレスなので動作音も気にならない。

 

デスクトップ スイッチングハブ

TP Link LS-105G

参考価格1,225円

ハイエンドオーディオ用のネットワークスイッチは100万越えもあるが、5万円未満でもオーディオ仕様のものが手に入る。写真のモデルは使わないポートを部分的にクローズできる。

 

ネットワークオーディオ向けスイッチングHub

BaffaroBS-GS2016/A

参考価格 49,720円

オーディオグレードLANケーブル2m 付属

筆者取材の主な関連アクセサリーの記事リンクは下記の通り。ご興味のある方はご覧ください。

LANケーブルの伝送ノイズ対策アクセサリー

オプティカルLANアイソレーター

TOP WING OPT ISO BOX

AV Watch 2025年1月

ACアダプタ用の電源ノイズ対策に・・

FX-AUDIO 「Petit Susie」シリーズ

Note 橋爪徹 2024年11月




シンプルに徹したMeridian 218 でQobuzのハイレゾを聴く

 

ノイズ・ミニマム思想が徹底されたシンプル設計のMeridian 218

 

以上で、お手持ちのパソコン使ったQobuz再生のシンプルなシステム構成は概ねご理解いただけたと思う。そして、いよいよハイレゾストリーミングの信号を受け取るオーディオ機器、Meridianの218を紹介しよう。

 

まず、仕様をかいつまんで紹介しよう。218は、Roon Testedに対応したデジタルプリアンプである。RCA入力、同軸/光のデジタル入力(MQAデコードにも対応)の他、ネットワーク入力に対応。出力は、RCAでお持ちのプリメインアンプやパワーアンプに接続出来る。

 

本体は、いたってシンプルな外観だ。ノイズ源となる接点(各種スイッチ)はなく、ディスプレイも無い。あるのは輝度を抑えたローノイズ仕様のLEDのみ。各種設定やコントロールは全て公式のアプリ「Meridian Control」で行なう。本体ボタンがないことで、置き場所の自由度が上がっている。

 

お手持ちのオーディオに適したアナログ出力を設定

 

Meridian Controlでの設定は様々あるが、さしあたり留意するのは出力の設定くらいだろう。「AUDIO OUTPUT」の設定でアナログ出力の方法を選択できる。RCA出力をプリメインアンプに繋ぐなら「Fixed(固定レベル)」。パワーアンプやアクティブスピーカーに繋ぐなら「Variable(可変レベル)」が良い。アクティブスピーカーの中には手元でボリュームを簡単に操作できるタイプもある。そのときは「Fixed」を選択すればよい。

 

下のスクリーンショットのようにMeridian Controlアプリの設定画面(Configration)からオーディオ出力の設定を簡単に変更することができる。

 

 

「プリアンプ」としてストリーミングとの接続を見据えたMeridian 218

 

218はRoonとの親和性に特別な側面をもつ。一般のRoon対応機器を開発するメーカーは、Roon独自のプロトコルであるRAAT等の技術をライセンスに基づいて得ている。

 

一方、Roonは前身であるMeridianのネットワーク・オーディオシステムSooloosから派生しているため、基本プロトコル等はMeridian社も共通して持っている。Roonの現CEO であるEnno Vandermeer氏は、Meridianに在籍したこともあるSooloosの開発メンバーだった。こうした特別な親和性のおかげで、安定性はもちろん、音質面でのトータルパフォーマンスが担保されている

 

2007年発表のMeridian Sooloos ミュージック・サーバー
2007年発表のMeridian Sooloos ミュージック・サーバー

 

ちなみにMeridian218をRoonで使うときの設定はとても簡便だ。ネットワークにLANケーブルで接続したら、Roonの画面に接続可能な機材一覧に218が表示されるので、「有効」に設定。再生画面上のアウトプットの一覧から218を選ぶだけ。218側の入力切り替えは、Roonを使うと自動的に対応の「SLS」に切り替わるから手間いらずだ。

 

                    
                    

ハイレゾ・ストリーミングの醍醐味をMeridian218で味わう

 

218の具体的な音質レビューは過去の記事で触れているので、本稿では事細かには触れないが、やはり時間軸上の精度の高さは特筆すべき点である。トランジェントが極めて良好で、楽器の音像は立体的、録音ロケーションの空間表現力にも優れている。

 

個人的には、帯域バランスに癖がないのも好印象だ。どんな曲を聴いても、向き不向きを感じない。電源回路を内蔵した小型ボディにもかかわらず、中低域のエネルギーに不足を感じることもない。ビートの利いた楽曲やライブ音源のような熱量を感じたい楽曲もサイズの大きい高級機と遜色ない音で聴かせてくれる。

 

実質的に余裕のある基板面積を6層高密度基板で確保し、デジタル信号経路やアースの最適化などノイズ管理を徹底しているからだろう。 

 

前・後編の徹底試聴レビュー。こちらも是非ご覧ください!
前・後編の徹底試聴レビュー。こちらも是非ご覧ください!

 

鮮烈だった音の印象。アポダイジング・フィルターに注目

 

218のテクノロジーで筆者が特に注目しているのは、「メリディアン・アポダイジング・フィルター」だ。現在、Meridianはこの独自のフィルタリングの仕組みをTRUE TIMEと呼んでいる。もともとは、CDで問題になった「デジタル臭い音」をいい音で聴きたいと試行錯誤したMeridianの創業者 ボブ・スチュアート氏がデジタル特有の“音のにじみ”が問題だと発見し、それを何とかしようという試みがはじまりだったそうだ。

 

現代の音楽制作では欠かせないAD変換時、どうしても音の立ち上がり前に発生するプリエコーノイズ。DA変換時にこれを抑える独自のフィルターによって、音像のディテールや立体感、発音の生々しさ、空間の奥行きや広がりなどが、他社と比べても別格の域に達しているのである。汎用DACチップには作れない音の魅力は、体感していただければCDの再生でも一発で分かるほどに鮮烈だと思う。

※グラフ画像はイメージ
※グラフ画像はイメージ

 

 

Roonで見つけたQobuz音源

TROPICAL JAZZ BIG BAND XVI - Easy Lover 熱帯JAZZ楽団

 

ルパン三世 ロシアより愛をこめて オリジナル・サウンドトラック

 

LIINK ユッコ・ミラー/H ZETTRIO

SAXES STREET MASATO HONDA

 


さらに使いやすくなったRoonの注目機能をピックアップ!

 

せっかくなので、Roonの便利な機能を少し紹介したい。

 

圧倒的なメタデーター管理、その実力に感動

 

偏食家の自分でも、出会いの喜びを実感できるのがRoonのすごいところだ。例えば筆者はサックス奏者の本田雅人氏が大好きだ。本田氏の音源は筆者のインスト原体験の1つであり、フュージョンがこの心身に刻み込まれたきっかけでもある。2015年の「SAX STREET」もハイレゾ版をe-onkyoからダウンロード購入し、SSDに保存済みだ。

 

本田雅人氏のCDリッピングやe-onkyo音源をRoonのライブラリに追加してアーティストのトップページを見る。すると「過去のアルバム」だけでなく、スタジオ・ミュージシャンとして参加したカウボーイビバップの「TANK!」までQobuzのカタログから一覧にして並べてくれるではないか。さらに「コンピレーションアルバム」もメタデータの情報に基づいて検索してきてくれる。他にも、筆者が世界一惚れ込んでいる作曲家である光田康典氏を検索してみると、何と海外のファンが作ったアレンジ盤なども出てきて驚いた。まるで、おせっかいな音楽同志ができたみたいだ。

 

「後で聴く」(Listen Rater) 楽曲を賢く整理できる音楽用のTO DOリスト

 

昨年アップデートされた「後で聴く」(Listen Rater) は、プレイリストとは違い、聴き忘れ防止に役立つ。

 Qobuzでアルバムやトラックをどんどんお気に入りに追加していると、どれを聴いたか分からなくなることはありがちだ。後で聴くは、専用のリストに登録した上で、「何分再生したか」「何%再生したか」の条件を設定し、そのどちらかを満たせば再生済みのリストに移してくれる。フォーカス機能を使えば、過去1年以内にライブラリに追加して、一度も再生していないアルバムを絞り込み、それらを後で聴くに一括追加……なんてことも出来る。

 

好みの楽曲、好みのフォーマットのプレイリストが自動で生成される「スマートプレイリスト」 

 

 同じく、「スマートプレイリスト」も注目の機能だ。普通、プレイリストは手動で作るのが当たり前と思う方が大半だろう。しかし、Roonならフォーカス機能で指定した条件を満たすプレイリストを自動で作成してくれる。自分のライブラリから、プレイリストが瞬時に出来上がるのは感動的だった。

 

例えば「2010年代」の「任意のレコード会社」の「シングル(EP)」といった括りで抽出してプレイリストを作ることも。筆者は、それで“アニソン懐かしプレイリスト”を作成した。Qobuzだけでなく、手持ちの音源までも関連付けしてくれるから便利すぎてため息が出る。

音楽再生の究極はハイレゾ・ストリーミングか?

Roon Listen Rater

 

筆者がまだハイレゾ初心者であった10年以上前。まだ音源も少なく、一曲一曲が本当に貴重だった。そしてようやく本格的なハイレゾ・サブスク時代が日本でも始まった。本取材を通してハイレゾで音楽を楽しむことが大きく進化したことに改めて感動した。

 

ハイレゾというのは、フォーマットの優劣より、スタジオマスターをそのまま楽しむということに意義がある。アーティストがスタジオで作っているときの音をそのまま味わうことで、ファンとして満足感が高まるのだ。

 

またハイレゾというのは、あくまで音の入れ物が大きくきめ細かくなるだけであって、中身によってはガッカリすることもあるし、より感動が深まることだってある。ハイレゾを楽しむことは、手元に物理メディアがない、ともすると味気ないオーディオなのかもしれない。しかし、スピーカーから聴こえるのは、スタジオでアーティストが聴いている音に最も近い。ネットワークに接続するオーディオ。思ったよりずっと簡単で、音楽生活はきっと豊かになる。 

 

今回の取材でRoonとQobuzの手を借りて、改めて創造性を刺激される興味深い音源管理が体験ができた。

 

試しに筆者は過去に見ていたアニメのサントラや主題歌を“レコード会社縛り”で検索し、あれこれ発掘してみた。それをRoonで再生すると追加したQobuzのサントラと関連した手持ち音源も探し出して自動で表示してくれる。「ああ!こんなのあった!久しぶりに聴こう」と思えた。QobuzをRoonで楽しむことで、膨大な楽曲から昔懐かしの楽曲をひょんなことから発見したり、大好きなアーティストの知らなかった音源に出会える。自分の持っていた音源とQobuzとの境界が魔法のように無くなり、自分の好みの幅を拡張してくれる。

 

音質に妥協した利便性追求のストリーミングの時代は終わった。Meridian218は貴方のオーディオシステムに、シンプルで高音質なストリーミング体験を約束するプロダクトだ。音楽生活のよきパートナーとして、RoonとQobuzと共に貴方に寄り添う存在になることだろう。

写真 橋爪 徹
写真 橋爪 徹

 

Qobuz 関連情報

 

Qobuzプランの詳細・・・https://www.qobuz.com/jp-ja/discover

JASジャーナルインタビュー・・・https://www.jas-audio.or.jp/journal_contents/journal202502_post20226

 

Roon 関連情報

 

音質について・・・https://roon.app/ja/sound-quality 

プランについて・・・https://roon.app/ja/pricing                                          


プロフィール紹介  橋爪 徹 

 

 静岡県出身、名古屋工学院専門学校 電気工学科を卒業後に上京。声優を目指し奮闘する中で、音響エンジニアとしてセミプロ活動をはじめる。10 年以上音声コンテンツの制作に関わったのち、そのスキルや人脈を生かしてハイレゾ音楽制作ユニット Beagle Kick を立ち上げる。この取り組みがオーディオ業界の目にとまり、2014 年よりオーディオライターとして活動を開始した。2017年には自宅に念願の防音試聴室”STUDIO 0.x"を完成。ライター、エンジニアとしての活動の幅をさらに広げている。